理事長挨拶

一般社団法人 福岡青年会議所
2022年度理事長所信


理事長 西嶋 聖

はじめに

 今から約80年前、アメリカを皮切りに世界的に起こった深刻な経済危機がありました。 多くの方が学校で学んだ「世界恐慌」と呼ばれるものです。この時アメリカでは、失業率が25% を超えるほど深刻なものとなり、この危機を脱するべく立ち上がった一人のリーダーが、当時の アメリカ大統領、フランクリン・ルーズベルト氏でした。彼の新任演説で述べた言葉は今もなお 語り継がれています。
「我々が恐るべき唯一のことは、恐れそのものである」
 一昨年より襲いかかる新型コロナウイルス感染症拡大により、社会経済は世界的に大きな打 撃を受けています。新型コロナウイルスによる長期間の社会情勢の混乱は、私たちの生活や仕事 にまで大きな影響を与えており、政府からの様々な支援がありながらも、依然として経済回復へ の道には、様々な障壁が残っているのも事実です。
 このような時、私たちJCメンバーはどうすべきでしょうか。 JC運動の始まりとされる、1949年9月3日東京青年商工会議所設立総会で採択された「青年 会議所設立趣意書」の冒頭にはこう書かれてあります。
「新日本の再建は我々青年の仕事である」
 こんな時代だからこそ、今一度新日本の再建に向け立ち上がったJC創始の原点に立ち戻り、 我々の使命を全うするために、私たち自ら変化していこうではありませんか。
 この状況からでも得られるものがあり、信念をもち、恐れず、あきらめず行動し続けることで 必ず道は拓けるものだと考えます。JCこそが、未来を担うべき先駆けたリーダーとなり、私たちのまちを、さらにはこの日本を、牽引していかなければなりません。 そのために、まずはしっかりと今ある物事に目を向け、常に前を向いてJC活動をしていきましょう。

青年会議所にとっての不易流行

 戦後76年がたち、経済復興も終わり成熟しているといっても過言ではないこの日本におい て、多くの経済団体も多数ある中、なぜJCが唯一無二の団体であるのかを考える岐路に立たさ れているのではないかと感じます。
 変わってはいけないものと変わらなくてはならないもの。 「奉仕・修練・友情」を信念にもち「明るい豊かな社会をつくる」という目的をもった、利害関係 のない組織であるという独自性はそのままに、あらたな手法でまちのための運動、ひとの成長の ための活動を達成していくことが、これからのJCに求められていることです。

70周年を転換期とした福岡青年会議所の運動の変革

 2020年初旬ごろから、コロナ禍によって余儀なくされた経験は、これまでの活動のやり方を 考えさせられる一つの大きな機会となりました。そして、その機会こそがさらなる強みをみせる 方法の一つとなり得ます。
 JCI福岡は2023年に創立70周年を迎えます。これを契機にJCI福岡が運動を行っていく上 で、まずは従来からあるネットワークの継続性を求めていく必要があります。
 2019年に経済産業省が、「21世紀の公共の未来図」というレポートを発表していますが、その 中で、今後の行政と民間の関係性は、「官民連携」から「官民共創」へとシフトすべきであると提言 されています。
官が社会課題の提供を行い、民がそのソリューションを提供する。
 あまねく人に対してしかサービスを提供できない行政であるがゆえ、本来であれば解決でき なかったような限られたターゲットに対する課題等に関しては、JCが提言できる部分、提供で きるものはまだまだ多くあるのではないでしょうか。
 今までは、年度ごと、委員会ごとに別々の担当者が各々の窓口に散発的に行っていた行政への 訪問を、JC側としての担当、役割を明確化し、行政の有する社会課題を定期的に収集する仕組み づくりを行っていくことが、今後の事業構築にとって必要です。
 これまで行ってきた運動を振り返りながら、新しい入口と新しい出口に対して大胆なアプ ローチをもって取り組んでいただきたい。

70周年を転換期とした福岡青年会議所の活動の変革

 コロナ禍において、ニューノーマルな活動様式を確立することが必要不可欠となった時代を 迎え、次のアフターコロナ時代を迎えたときに、我々JCI福岡メンバーは、どのように活動して いくのか。
 今まで、汗をかきこのJCI福岡の礎となってこられたシニアメンバーの方々の想いを継承し つつも、時流に沿った活動を行う必要があります。
 委員長の仕事とは、上司・部下という関係以上に、一人の人間として向き合い、悩みに寄り添 い、ともに問題解決をする。そのような、ひととしての力が必要だと考えます。「集う」というJC の持つ最大の武器に制限がかかった今、そのマネジメントを駆使した活動様式への変革が必要 です。膝を突き合わせ、酒を飲み交わしながら、多くの意見に耳を傾けることで自分を根本から 見つめなおしていたことが難しくなっている中、WEBでその代用ができるのか、どこまでをリ アルで突き詰めるのか、その線引きをより明確に行っていく必要があるのではないでしょうか。
 またメンバーの心持ちとして、JCの良さを実感できるにはその多くに関わってもらうことが 大切です。従来のJCでは、強制力と連帯感でその機会をもたせていましたが、これからは一人ひとりの能動的な関わり方が必要になってきます。困難な世情の中、JCに心血を注ぐことは難 しいことかもしれませんが、だからこそ人生において得られるものは今までよりも濃いものと なるでしょう。
 コロナ禍を経験し、70周年を迎えようとしている今、JCI福岡創立50周年の時に記されてい た『不易流行』という言葉を噛みしめ、時代に沿って残すべき伝統と変わらなくてはならないも のがあります。
 JCI福岡は、2010年には「グランドデザインFUKUOKA」 という様々な提言をおこなってきました。 70周年を契機に大きく変わりゆく組織変革のため、FUKUOKAでの今まで以上の存在意義の ため、次の80周年、その先の100周年へと続く持続可能な団体に向けた第1歩を我々の時代で 踏み出していかなくてはならないと考えます。
 そのためには持続可能な福岡のまちを創造するための、新たな提言を行うことが必要となり ます。また、ウィズコロナ、アフターコロナにおけるJCI福岡独自のカンファレンスガイドライン、 活動指針を新たに策定することで、より活動をおこないやすくすることができるのではないで しょうか。忘れてはならない「創始の精神」と、変わらなくてはならない今後の団体の活動指針を 確立していき時代を捉えていくことが必要です。

国際連携とFUKUOKA連携

 JCの強みの一つである国際ネットワークは、コロナ禍において弱くなりつつあります。この ような状況下だからこそできる関係性の再構築の手法を新たに考え、今後のJCI福岡のために 新しい関係性を築いていただきたい。
 JCI福岡の活動を現実化させるために必要なもの、JC運動を実践していくために必要なもの は単独で活動を行うのではなく、行政や様々な外部団体と連携をするということです。そのため には外部との接点、連携をより強く持つ必要があります。
 福岡のまちには、行政とのかかわりもさることながら、他団体が無数に存在しています。他の まちには少ないといえるこの状況は、JCI福岡にとって大きな力となるといえます。 福岡のまちをより素晴らしいまちに変えるべく、色々な方法により既存の団体との連携、そして 新しい形での連携を強くしていただきたい。

教育とFUKUOKAの未来

 我々が福岡の未来を語る中で欠かすことのできないもの、それは一体何でしょうか。将来を 担っていく人財であると考えます。今からの10年後、50年後、100年後の未来へと残る後世を 担う人財を教育することも、我々JCの担うべき役割の一つだと考えます。
 その中で、2019年よりおこなっているKids JAYCEE、Young JAYCEEの育成事業について も4年目となります。コロナ禍ではありますが、様々な形において事業をおこなってきました。
 まだまだ新型コロナウイルスの影響が根強く残るであろう2022年度においてもKids、 Youngの世代が積極的に現場で学ぶことが困難となっています。今こそ我々が先陣をきって学 習の場を提供し、普段では学ぶことのできないコミュニケーションの機会を提供すべきだと考 えます。
 Kids JAYCEE、Young JAYCEEの育成事業においても、設立された意味をしっかりと考える 過渡期に差し掛かっていると考えます。改めて本来あるべきJAYCEEの持つ心を、Kidsと Youngの世代に学ばせようとしている意味を考え、本年度のあらたな事業としていただきたい。

JAYCEEの確立

 人を想い、ひとのために必死に取り組むことは、何ごとにも代えがたい人生最大の財産であ り、目標達成のための大きな原動力となります。多くの仲間、人生の師との出会い、同じ目標に向 けて支えあい、共に苦難を乗り越えていくことが、自己の成長を促し、かけがえのない仲間を作 ります。これこそがJCの魅力であり、アイデンティティの一つでもあります。
 「機会は平等だが結果は不平等である」、この言葉の示す通りJCにはあらゆる機会が存在し ています。その機会を与えてくれるのは先輩であり仲間です。時には励まし、時には叱られ、引っ 張られ、背中を押されながら、私たちは少しでもよくなろうと前に進んでいっているのです。一 人ひとりが機会を得て、自己を成長させ、また他者に機会を与え成長させる。この繰り返しは、自 ずと組織を活性化させ成長させていきます。
 今後もJCの活動内容や形態が変化を遂げたとしても、この根幹は次代に伝えていく必要が あると考えます。現役同士の機会もさることながら、シニアメンバー、姉妹JCとの機会も新し いカタチで推進していただきたい。
 さらに、ここ2年では、JCI日本の議長・委員長も輩出し、さらに九州地区協議会、福岡ブロッ ク協議会への役員出向など、外部へのリーダーを多数輩出しており、メンバーにとって出向の機 会を享受するだけでなく、LOMメンバーの成長への機会創出も可能となります。また出向先で のメンバーの活動は、LOMでの経験を他のLOMメンバーの成長へとつなげることもできると 確信しています。
 福岡のエリアを出るだけでも、自分の想像以上の世界があるのは間違いありません。しかし、 その先には必ずその経験の伝搬が行われてしかるべきです。 出向を契機にLOMではできない経験を受け入れ、またLOMもその経験を受け入れより良いも のへと変えていく。このサイクルを途切れさせることなく、より強固なJCI福岡に変革する機会 としていただきたい。

会員拡大と研修について

 卒業があり、新陳代謝を繰り返す団体の中で、常に一定の力のあるメンバーで構成される団体 こそ、他の地域のLOM、福岡のまち、ひいては日本の発展に寄与することができると確信してい ます。常に目を向けていかなければならないのは、JC外における人財をどのような形において 発掘していくのかということです。
 平均在籍年数が4年を切る現在、懸念することは、先輩方との交流の希薄化、そして構成メン バーの経験不足です。これは現在のコロナ禍においてより加速しつつあります。 今こそ門戸を広げさらにメンバーの拡大を行うべきです。今までのような拡大ターゲットだけ ではなく、もっと広い視野で拡大候補者の発掘を行いつつも、数だけではなく実際に活動のでき るメンバーを育ててほしいと考えます。
 また、研修についても同じことが言えます。対面において活動することが制限される中で、研 修のプログラム作成は非常に重要なものとなります。構成メンバーの経験不足を補え、仮入会人数の多い少ないに関わらず、実施することのできるものを作成することが求められます。
 育ロムの推奨など、JCI日本において提唱されている、理念共感拡大グランドデザインに見ら れる理念共有の為の手法を取捨選択・検討することで、JCI福岡がリーディングLOMであると いうこと、JCの吸引力・維持力を高めていくことが必要です。 そのためには、特定の委員会だけでその拡大、研修の責を負うのではなく、LOM全体で行うこと が必要なのは言うまでもありません。
 ダイバーシティマネージメントが唱えられている昨今、拡大や研修においてもしっかりとロ ジカルな視点をもって取り組むと共に、多様なメンバーをJCI福岡へ迎え入れ、新しい形の活動 様式においても活動できるメンバーをLOM全体で育てていきましょう。

委員会所務の今後の在り方を考える

 2022年度はウィズコロナ、アフターコロナの入り混じる過渡期になると考えます。 だからこそ、一つひとつの所務を新しい様式に合わせ、一から見直し、考えることが必要です。現 役メンバー同士の交流、シニアメンバーとの交流、姉妹JCとの交流、新規カウンターパートナー の模索、交流、教育問題について、拡大手法、研修手法、広報戦略、会議手法、懇親会のあり方など 様々な視点において転換期であると考えます。
 委員会の所務を分かりやすく分けることで、一からその所務のあり方自体を考え直していた だきたい。あえてこの様にすることが、JCI福岡の今後の在り方を決定付ける何かを、確立でき るのではないかと考えます。
 毎月の例会一つにとってもそうです。集うことの困難な状況でも例会の大切さをJCのメン バーに今一度伝える必要があります。
 委員会、例会に参加することは、JCに所属しているメンバー一人ひとりの義務です。例会の中 で唱和するJCIクリード、ミッション、ビジョン、JC宣言、綱領は、JCに所属している意味を今 一度理解し、襟を正す所であると考えます。入会歴の浅いメンバーやなかなか参加できていない メンバーを誘い、楽しく参加できる環境を作るのは、LOMで役職を受けているメンバー一人ひ とりの使命なのです。

 さらに広報についても同じことが言えます。JCI福岡を知ってもらうために、とても重要な広 報活動。対内に向けた広報は、LOMから出向しているメンバーの活動状況やLOM内での活動 をより輝かせるツールでもあり、LOMの事業一つひとつをどう見せるかが重要です。  対外に向けた広報に関しては、JCが何をしている団体なのか、JCI福岡を発信する重要なツー ルでもあります。広報のやり方によってJCの魅力が伝わるか左右されます。今一度JCI福岡の ブランディングをどのように行っていくのかを真剣に考え、広報をしていくことが重要である と考えます。自分よがりの広報をするのではなく、行政、パートナー企業、協賛企業と手を取り合 い、JCI福岡の魅力を発信していく必要があります。
 総務、財政規則面に関しても同じことが言えます。全国691LOMある中で、JCI日本が定める 規則を理解しているLOMは数少ないと考えます。出向をして規則にふれているメンバーは理 解しているかもしれませんが、JCI日本の基準も年々変わり、進化していっています。事業をす る上で、対外に広報をするときにもコンプライアンスを遵守する必要があります。メンバー一人 ひとりがこの基準を理解し、JCI日本の基準と同等のコンプライアンス基準に達することによっ て、今後LOMがアワードを申請する際にも必ず役に立つと考えます。

最後に

 外的要因により組織を改革せざるを得ない状況は、まさに転機であるとポジティブに捉え、前 を向いて突き進んで行きましょう。我々青年が、率先して行動することでJCの上位目標である、 明るい豊かな社会を共に築いていきましょう。終わりの見えないこの社会情勢に一石を投じる のがJCの役割であると考えます。
 皆さんにはJCに送り出してくれる会社の上司、同僚、部下がいて、家族が存在しているでしょ う。JCという組織において活動させていただいている我々は、会社や家族に対して感謝の念は 決して忘れてはいけません。 我々一人ひとりが、周りの人にとって価値ある存在となり、誇れる団体にならなければなりませ ん。そのために、このJCI福岡を我々一人ひとりの手で育んでいくことは本当に必要なことなの です。
なぜJCに所属しているのか。
 JCメンバー一人ひとりが自問自答し、答えを見つけ、地域のため、社業の発展のため、愛する 家族の幸せのため、当事者意識をもち行動を起こす。 JCI福岡はLOMメンバーへの成長を約束し、常に進化を続ける組織であり続けることが必要です。
 この状況下において我々がしなければならないことは一体何なのか。戦後まもなくJCが発 足したときの様な「創始の精神」に立ち返りつつも、能動的であるべき我々JCI福岡メンバーが、 先陣を切って何かしらの新しい形を作り出さなければなりません。
 JCは、いつだって現役の我々が主体である組織ということは、再度各々が認識していただき たい事柄であります。「原点回帰」した上で、コロナ禍を転機とした活動様式を生み出し、我々の 手でこれまでの常識に捉われることのない、ニューノーマルなJC運動を構築していきましょう。